2012年07月15日

【ユーなのSS】夫婦喧嘩は犬も喰わない二人組



というわけで、とりあえず一本SSあげておくことに。
ユーなの同盟二周年用に書いたSSなんですが、同盟サイトが実質閉鎖状態になった結果
どこにも公開されていない状態になってるSSをば。
そんなわけでリリカルなのはSSでカップリングは「ユーなの(ユーノ×なのは)」あるいは「なのユー(なのは×ユーノ)」です。

当時の内容そのままで落としてみたので
あとがきも当時のままです。まああんまり気にしないでくださいな。

簡単なネタSSでも一本書いてみますよー。


ユーなの同盟二周年 企画作品

夫婦喧嘩は犬も喰わない二人組!?―甘々な新婚生活編―





―1−





 ――高町なのは教導官とユーノ・スクライア司書長が結婚するそうです。


 その言葉を聞いても、彼らの共通の友人たちはそれを信じることはできなかったという。まあ、彼女や彼のことを知るすべての人の共通した意見だったというべきであろう。

 それはもちろん、あの二人が結婚するような仲じゃないという意味では決してない。いつも親友以上恋人未満という位置に甘んじて、どちらも本当の意味でそれ以上を仲になろうとしなかった二人。周りの耳だけはやたらと広い親友たちは事あるごとに二人の仲を進展させようと謀ったものの、結果のすべては失敗という結末を迎えてしまい、完全にあきらめていたほどだ。
 そんな二人が結婚する、という話を聞いても、正直デマか何かかとしか思えず、二人の共通の友人であるフェイトでさえ単なる噂話にしか過ぎないと思っていたほどなのだから。

 二人の間柄はそれほどにまで「親友」という形が強かったのだから、その手の話が何度か過去に上がった時も二人のそれぞれの友人は「またかぁ……」などと皮肉を利かせながらも、あの二人に限ってそんなことはない、と言い切ってしまうほどだった。ただ、双方ともだからと言ってそれ以外の人がいるわけでもなく、友人たちからは熟年結婚とかあるんじゃないだろうか、といわれているほどだった。

 そんな中でのその噂。誰もが信じていなかったその話は、なのはとユーノの知人たちに「結婚式の案内」が届くまで誰もが信じていなかったほどだったのだから、当人からすれば笑うしかない。

 結局、結婚式直前になって本当に結婚することを理解した面々が忙しく準備や休暇申請をしたために、時空管理局の機能がその日、数%程度低下したという逸話つきなのだから、良くも悪くも高町なのはにユーノ・スクライアという二人の交友関係の広さと共に、重要性がわかるエピソードでもある。

 と、そんな結婚式からそろそろ1年が経とうとしたとある日のことだった。


「うにゅぅ……ふにゅ……」


 気持よさそうにベッドでのんびりとぐっすりとオヤスミ状態の綺麗に伸びた印象的な鮮やかな栗色の髪の女性。近頃は長く伸ばした髪を彼女の親友と同じように下のほうへのリボンを使った一つ結びをするようになったのは、愛している夫からもらったリボンの使い道を考えたうえで決めて、その髪型を夫がとっても綺麗だよと言ってくれたからという至極単純な理由だったりする。

 なのは・T・スクライア。今年で年齢……は永遠の17歳か何からしい。おもにその特徴ある声的な意味でだが、実際に見た目の年齢をとっているようには見えないのだから仕方ない。そもそも、彼女の母の高町桃子さんですら未だに30代といっても通ってしまうほどなのだから。


 昨日は久しぶりに彼女の夫、ユーノと娘のヴィヴィオ、そしてなのはの三人が昨日と明日と休暇が重なったので、なのはの実家のある地球に里帰り。桃子や士郎を含めて、高町家のうちドイツに行っている恭也を除いたメンバーが全員集合しただけあって、それは相当賑やかだった。
 そこでいっぱいお出かけをしたり食事をしたり。ユーノが薦めてきた自然公園ではヴィヴィオがとても嬉しそうに走り回ってくれて、連れてきた甲斐があったよぉ、とユーノも満足そうな笑みをあげていて。

 と、一回寝返りを打って、うにゃ……という声を出しながらも、まだまだ起きる気配はない。管理局のお仕事を始めてからは朝はだいぶ強くなったはずなのだが、ユーノと結婚してからは非常勤の勤務を増やしてヴィヴィオやユーノと一緒にいられる時間を増やした結果、朝からの出勤が大きく減って、もとは朝が弱かったこともそれに加わってあまり朝には強くない状態に戻ってしまったのだ。それでも前よりかはマシで、起きないといけないときにはちゃんと起きることもできるのだが。

 そのことは自分でも自覚はあるらしく、親友でもあるフェイトあたりがそのことを聞くと『幸せ太りならぬ、幸せ眠りだよ〜。それに起きられなくなったら王子様が起こしてくれるから大丈夫だもんっ♪』と惚気たっぷりの言葉を聞かせて、周りの人々が呆れかえったらしい。

 幸せゲージMAX。単なるバカップルともいうが。


「うにゃぁ……えへへ、ユーノぉ……」


 夢を見ながらもその表情は、本当に幸せそうな満面の笑みで染まっていた。というよりも、結婚して幸せです、と言わんばかりの笑みだった。寝返りを打ったなのはが発した言葉は最愛の人の名前。
 惚気という状態を素で表現してしまうところに、なのはのなのはたる所以すらむしろ感じてしまう。何より、言葉を発したなのははむしろ嬉しそうに寝ているままで。そんな表情を浮かべるなのはを見つめる一人の視線。


「……ふふっ、本当にぐっすり眠っているみたい……僕の名前を呼んでるし」


 その中性的な顔立ち、無限書庫という部署ゆえの食事や運動が不規則な結果でもある別の意味で特徴ある体格、そして端麗にまとめながらも、手入れを欠かさずに伸ばしている淡いブロンドの髪から女性かとも間違われる姿に身をまとった青年が、ぐっすりと夢の世界に奥まで入りきって心地よさそうに眠っているなのはへと近づいてゆく。

 そんな男女問わずに思わず振り向いてしまう、彼の名前をユーノ・T・スクライアという。

 結婚しても、高町姓を残したのは、なのはからではなくユーノが提案したことだった。
 それは、高町ヴィヴィオという名前を持つ二人にとっての娘のことを配慮して。あの年で何度も名前を変えるのは少女にとっても酷な話でもあって、同時にきっとヴィヴィオにとって『高町』の名前は一生大切なままであろう名前でもあろうから。同時に、彼自身にとっても。


 本当に幸せそうに本当に寝ているのか疑いたくなるほどに見るからに嬉しそうな表情で掛け布団に抱きついているなのはに、少しばかりの苦笑いを含めつつ近くまで寄っていく。
 
 高町家でも、二階にあったなのはの部屋はなのはがこの家から出て行った後もそのまま残してあって、今回の帰省でもなのはとユーノとヴィヴィオは三人揃ってその部屋で三人で川の字になって寝て。ただ、ユーノの隣をなのはとヴィヴィオが競ってしまい、真ん中にユーノが寝るというちょっと歪な川、ではあったが。

 で、その中で最後までぐっすりと眠っているのが、この通り、というわけだ。

 クスッと、小さく笑みを浮かべながら手を口元を隠すようにする動作は、あまりにも無防備な彼女の姿を見てのほんの少しの和やかさ。思わず浮かべたくなるぐらいの、それ。
 空を飛ぶ彼女は、とても凛々しく見えて、頼りがいのありそうな芯のある女性なのに、今ここで彼にスキだらけの状態を見せているのも、また彼女。
 フラットな彼女は小動物のような可愛らしさで。それを知っているのは一部の親友と娘に彼だけ。しかも、彼は親友でもあって、同時に彼女の『一番』でもある。そう自覚すると嬉しくなってしまうから、本当に世の中は不思議だと深く感じて。

 ぐっすりと眠って起きる気配すらない彼女。そんな彼女の近くで、そっと声をかける。それが、彼の休日の朝の日課だった。


「もう……9歳の頃じゃないんだから、僕に起こされないといつまでたっても寝ちゃうのどうにかしないと……大変だよ?」

「うにゃにゃぁ…………」


 まあ、なのはは寝ているから聞こえるわけないんだけどさ……までを言おうとして、それに割って入るようななのはの寝言に思わず苦笑。本当は起きているんじゃないかなぁ、とジッとなのはを見つめるものの、特に変わらず。
 むしろ、寝ているなのはの無邪気な笑顔にむしろ見とれてしまいそうだった。
 

――結局、結婚しても二人の関係は親友のときとあまり変わっていない、とユーノは思っている。特に顕著なのが呼び方で、なのはは結局ユーノ君、のままでユーノの場合はもとから呼び方は「なのは」だったので、こっちも変わらず。
 結婚して二人が「夫婦」と呼ばれる関係になっても、今までと何か変わったかといえばそれこそ「親友」が「夫婦」と呼び名が本当に変わっただけにすぎないほどに。

 ただ、ユーノにとっては、一週間に一度程度だったその日が、毎日に変わってゆき、毎日なのはとヴィヴィオの笑みを見ることができるようにもなって。それは純粋に嬉しかったりもして。

 ただ、他人からの視線をほとんど気にしないユーノだけあって、他人からすれば、それは思いっきりラブラブ一直線のバカップルなのだが、本人にはそういう自覚はないらしい。

 親友の一人である八神はやてにして『あれが本当の夫婦漫才』と言わしめただけはある。なんせ、喧嘩をしても、はやてからすれば『あれは喧嘩じゃなくて漫才や』とツッこむほどなのだから。

 そんなことを瞳の先にいる彼女の表情を一刻たりともずらさないままに見つめて。


「……まあ、君はいつだって突然で、天真爛漫で、だけど一度決めたらとことん突き進むタイプだし……だからこそ、僕も君のことが……」


 大好きなんだけどね、と言う言葉は呑み込む。結婚しても、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。だとしても、やっぱりなのはだけには本音をいつでも告げたい。
 それでも、やっぱり意識してしまい顔が少しだけほんのりと赤く染まってゆく。それに今のなのはは薄着のパジャマが一枚という完全にフラットな状況。一緒に寝ているときは気にしなかった癖に、いざこうやってみると胸元あたりにあるべき「あれ」がなく、妙に強調されていたりして……。

 それに気づくのと同時にユーノの頬が一気に顔が赤くなったことは言うまでもない。結婚しても、確かにこういうところは初心なままで一切変わっていないのは事実らしい。


 閑話休題。好きかどうかはともかく、時間は一瞬たりとも待たずにそれを刻んで進んでゆく。そろそろ起きてもらわないと困るのも事実。もちろん、ユーノだってなのはやヴィヴィオと一緒に今日は、久しぶりにお休みが重なったとある共通の親友と会う予定だってあるわけで。

 ふぅ……、と一息をゆっくりと大きく入れると、ユーノも本腰を入れてなのはを起こそうとして、胸をできる限り見ないようにすると、なのはにそって手で揺さぶって起こそうとする。


「ほらっ、なのは、もう朝だよっ!」

「うぅぅ……まだ寝たいのぉ……後、5分だけぇ……」

「何を、ヴィヴィオみたいなこと言ってるのさ、なのは!?
本当にまったく……でも、こうしていると昔を思い出すよ……はぁ」


 右に左に上に下に。ゆさゆさと、揺らしながら声を出すものの、最初の一言以降はろくな反応もないままでぐっすりとしたまま。本当にこういうことには妙に意地を張るなのはに、困ったような表情を浮かべながらも同時に楽しそうでもあるユーノ。

 ユーノがジュエルシードを探して地球で倒れてしまい、なのはに助けてもらってからの数ヶ月間、その部屋はユーノにとっても帰ってくるべき家でもあった。その間、朝がどうしても弱いなのはを毎日毎日起こすのはユーノの役目だったのだ。もう10年以上前のことなのに、ついこの間のように思い出せるほどに。

――あの頃も、似たようなことを言ってたような気がする……なのはは変わらないなぁ……いや、僕もかな。

 10年以上前から変わらぬ思いをなのはに対して持ち続けていたユーノ。今も愛おしい存在であって、思わずギュッと抱きしめてあげたいほどに。
 それを一瞬考えてしまって、ユーノはそれなら、となのはの耳元まで近づいてそっと呟く。


「なのはぁぁ……早く起きないと……キス、しちゃうよ?」

「……うにゃぁ……もう一杯だよぉ……」

「……聞いてないね」


 雰囲気を出して、それなりにそっと優しく耳元でつぶやいた言葉に対する寝言の返答にため息一つ。幸せが逃げるという、そのため息。

 でも、幸せが逃げても、持てないぐらいの幸せを今、自分は持っている自信がユーノにはあった。もう幸せすぎて誰かにお裾分けしたいほどに。なんとも無駄に大きな自信だが、冗談でもなく真面目も大真面目なのだから、きっとここにヴィヴィオや美由希がいたら呆れかえっていることだろう。


「ユーノくぅん……それ……大好きぃ……」

「もう、なのは……起きてよ、早……って、ええ?、なんなのなのは!?」


 若干の沈黙の後にもう一度起こそうと、なのはに再度の揺さぶりをかけようとして……それはなのはがいきなり伸ばしていたユーノの腕をギュッと掴みだす。もちろん不意のことにユーノの姿勢は崩れて、なのはの上に見方によっては抱きつこうとしているようにも見える。

 やっぱり起きていたのか、と声をあげて抗議の意をあげようとして……なのはのぐっすりと心地良さそうに寝ている顔がすぐ目の前で。


「ね、寝てる……って、あれも寝言……?って、早くなのは、起きないと……ほ、本当に……」

「にゃははぁ……ユーノくぅんがいるよぉ……夢の中なのにぃ……」


 突然のことにあたふたとしながらも、言葉からは、凛としたユーノの知っているなのはは、同時に優しい揺りかごのようにすべてを包み込んでくれるような母親としてのなのはも、そこにはいなかった。乱れたパジャマに、目を覆いたくなる情景。そしてギュッと目と鼻の先にあるなのはの唇に目線は完全に縛られてしまう。なのはの寝ぼけたような魔性の微笑みがまるで、悪魔の微笑みのようにも、天使の微笑みにも感じてしまう。

――この世界には、確か眠り姫はキスで起こす風習があるって、はやてが言っていたし……

 完全にそれははやての遊び心満載の嘘なのだが、そんなこと知る由もないユーノは困惑と同時に、とにかくなのはを起こさないといけないのにそのままに流されてしまう。
 最愛の人に引きずられてベッドに寝るような形で、すぐ隣には寝ぼけたなのは。寝ぼけているなのはの言葉が、まるでメフィストフェレスの囁きだった。
 最後には天使が迎えに来てくれるのか、いやそもそも、目の前にいる彼女こそが天使なのか。


「えへへぇ……夢だもんねぇ……大好きだよぉ……ユーノォ……」

「あ、あの、なのは。これは夢じゃなくて、その現実で……」

「……てへへぇ……いつも、恥ずかしくてぇ、呼び捨てにできないけど、夢だもーんっ♪大好きだよぉ、世界の誰よりもぉ……ユーノ……ふふっ……」


 なのはの甘い囁きと乱れて今にも脱げ落ちそうなパジャマ。寝ぼけたなのはの視点はユーノを見つめたままで、まるで抱きつかれているユーノの方が夢見心地気分になってしまいそうになる。なのはの言葉が一つ出るごとに引き込まれるかのような錯覚すら感じてしまって。


「な、なのは。起きているのか寝ているのかわからないけど、とりあえず寝ぼけているなら起きてくれないと、そのいろいろと……」

「ユーノ君の肌ってぇ……とっても柔らかいのぉ……ユーノのぉ……唇もとっても柔らかそうなのぉ……てへへぇ……旦那様にぃ、朝のぉ……えへへぇ……」


 一体どんな夢を見ているのか、むしろそっちを問いたくなるユーノだった。そんななのはは夢を寝ぼけてみたまま、ギュッと腕だけではなくユーノに直接抱きつくように、ユーノの唇の前まで近づいて。

 後、1cm。

 そんなもう、少しでも動けば互いの唇が触れ合う距離にまで近づいて。起こそうとしても特に起きる様子もなく……否。
 余りに現実とかけ離れている状態に何か悟ったような表情を浮かべて、ユーノが断言するように声を発した。


「な、なのは、君……起きてるよね?」

「そんなことどうでもいいの……それに、寝ぼけているもん。なのはぁ……
えへへ。そんなに私の演技ってうまかった……?」

「寝ぼけているところは特にね……いつだってなのはは寝ぼけている気がしてくるぐらいに」

「それ、褒め言葉じゃないよねユーノ君……ちょっぴり不満。でも、悪ふざけしちゃったら、その、本当に……ユーノ……」

「もう……なのは……」

 幾らなかなか起きないといっても、これだけやって起きないはずがない。つまり、最初から寝ぼけた振りをしていたのだ。なのはは。そんななのはにユーノも呆れながらももう止まることもできない二人。

 滅多に呼び捨てで呼ばない、否、呼ぶことができないなのはが、意を決したような声色で小さく囁くように呼び捨てで名前を呼ぶ。
 それに合わせて、ユーノもそんななのはを受け止めるかのような声で返して、そのまま怠惰に流されるように唇同士を――――



――――――――――



「で、なのはとしては、遅れたのは朝からユーノといちゃいちゃしていたから、と……」

「てへへ……そういうことになるのかなぁ?
だ、だって、ユーノ君ってば、私が1回だけって言ったのに、3回もキスするんだよっ!時間がって言ってもやめてくれないし……ユーノ君、嫌いになっちゃうよっ!」

「そんなこと言ったら、朝から寝ぼけた振りしたなのはが悪いんじゃないのかな?僕だって、なのはを起こしに行ったのに全く帰ってこなかったせいでヴィヴィオと美由希義姉さんに白目で見られちゃったんだからさ。僕の方こそ、今日のあれはどうだと思うよ、なのは?
 そ、それに、なのはが誘ってくるのが、そもそも原因でしょう?!」

「ううん!ユーノ君が、朝私を起こしに来ちゃうからだよ!思わず甘えたくなっちゃったんだから!」

「……説得力がないよ、ユーノもなのはも」

「まあ、確かにそう言わざるえないっちゅうか……さすがは、夫婦漫才、って感じやね」


 朝もそろそろ昼、と呼び名を変える必要がある正午前。喫茶翠屋で親友を待っていたフェイト・T・ハラオウンと八神はやては、慌てた様子で入口から入ってきた二人の親友と少女から遅れた理由を聞いて、二人揃ってブラックコーヒーを口に運びながら呆れた表情を満面に浮かべていた。
 表現的に非常にあっていないのだが、まさに満面の呆れ顔、というやつだったのだから、それ以外の表現がない。

 ――甘い……口元に運んだブラックコーヒーの苦さがほとんど感じられないほどに。

 それ以上に、朝からこの二人のことで御苦労だったであろう美由希とヴィヴィオに視線を移す。ちょうど美由希も翠屋の手伝いに入っていて、目線が合うと互いに同情の眼差しを互いに向けていた。大変だった美由希への視線と、これからこの二人と話さないといけないフェイトやはやてへの同情の視線が。

 しかし、互いに批難の言葉をかけているところ『だけ』は喧嘩らしく見えるがその前後の言葉はどうみても、ラブラブであり、ましてや批難している事情で結局1時間以上遅れてきたのだから、説得力の「せ」の字すらなかった。
 だいたい、喧嘩しているはずなのに、互いに相手がいかに愛おしいかを連ねている時点で、二人とも決定的に間違っている気がしないでもない。
 二人が結ばれるようにいろいろと手を打つことも多かったフェイトやはやてだったが逆に後悔したくなるほど……バカップルなのだから。


「……ヴィヴィオも大変だったでしょう?ここは、私がおごってあげるから好きなものを食べてもいいよ?」

「うんっ、ありがとうフェイトママ! でもね、いつものことだからヴィヴィオは大丈夫だよっ!」

「あれが、いつもって……」


 いつものことなの!?と目の前の情景を「日常」と言い切ってしまう少女に返す言葉が見当たらない。そんな二人をよそにユーノとなのはは、喧嘩の言い争いという衣を被った甘々な会話を続ける。他人の都合など無視するどころか、自分たちだけの空間がそこにはできていた。誰も入りたいなどと思わないような空間が。


「私は……昨日から、ヴィヴィオと一緒でいたし……偶には、そのユーノ君と二人だけでギュッと抱きたかったんだもん!だから、ユーノ君が悪いの!」

「僕だって、なのはと一緒にいたいけど、ヴィヴィオの喜ぶ顔を見たら、そんなこと言えるはずもないから我慢していたのに……君のせいで僕の我慢は台無しじゃないか!それに、僕はなのはもヴィヴィオも大切だからねっ!」


 見つめあいながらも、言い争いをしているのはさすが二人というべきか。
 ただ、問題なのは、雰囲気だけなら喧嘩しているはずなのだが、言っていることは「一緒にギュッと抱きあっていたかった」という無茶苦茶な話だったが。

 甘々な空間は、糖度でいえば90%オーバー。もう殆ど糖そのもので、いるだけで甘い香りが漂ってくる錯覚にすら襲われかねない。
 それのほどは、二人やヴィヴィオはもちろんのこと美由希に、それどころか翠屋で仕事中の桃子さんや士郎氏までも無視を決め込むほどだった。


「なのはもユーノも、結婚してもあれで殆ど関係は変わらないって言うんだよねぇ……はぁ……」


 飲み終えたコーヒーをふと置くと大きくため息をつくフェイト。二人双方の親友である以上、さすがに避けるわけにはいかない。しかも、どちらも自分の命を救ってくれた言うならば命の恩人なのだから。代わりに別の意味で、生命の危機におとされそうな危機感ができていたが。
 完全になのはとユーノの空気に流されてしまうフェイトの隣で、同じくコーヒーをジッと飲み続けていたはやても、表情はフェイトと大して変わらない様子なのだが、何か思い当ったかのように、納得した趣で、コーヒーを飲み干すと、ゆっくりと未だにどっちが悪いかで、互いのよさを言い合っている二人へ視線を変えないままで、呟いた。


「フェイトちゃんが言うこともわかるけど、私はちょっと違うと思うわぁ」

「違う?」


 あれだけ甘くて、しかも喧嘩すら周りからすれば、単なる夫婦の楽しそうな会話で、何が違うのか、と本当に予想外と言わんばかりの表情を見せるフェイト。そんなフェイトを尻目に、そのままコーヒーの入っていたカップを置くと語りだした。

「まあ、確かに本質は変わっておらへんしなぁ。ユーノ君もなのはちゃんも、結婚したからといって互いへの思いやりを変えたわけじゃあらへん。あの二人の場合、そもそも親友だと言い張っていたときから、傍目からは恋人同士と勘違いされることもあったわけやし。
 で、とはいえや。昔からまあ、と言っても変わらないなんてことはありえへんし、人は前よりも強い関係をもったなら、それに似合っただけの愛情がほしくなるわけで……」

「……だから、あれぐらい関係が深みにはまるわけ、かぁ」


 関係は、親友から夫婦に変わっても、それを示す単純な愛情表現は変わるわけではない。そして、そもそも親友だった時から親友だとは思えないほどに、二人の関係を知らない人からすれば恋人か何かと勘違いするほどの仲だったのだから、その親友関係よりも圧倒的に強くて濃い夫婦の関係になれば……後は語らずとも、と言わんばかりにはやては、言の葉を紡ぐことをやめた。

 正直、馬鹿らしかった。あれが、なのはちゃんとユーノ君にとっての「家族の普通やんやよ」と言うなんて。あれが家族なら、世界中のどんな家族だって単なる友人扱いされてしまいそうで、普通の夫婦の愛情表現なんて、単なる喧嘩をするときの言い争いと変わらないようなものや、などとは言いたくない。


「も、もうっ!私もヴィヴィオも大切だから、って卑怯だよぉ……何も言えないじゃない……ユーノ君」

「でも、嘘じゃないから……なのは」


 ふと、いつの間にか言い争いが二人揃って頬を赤く染めて互いを見つめたままのなのはとユーノを見て何かくだらないことに気付いた様子のはやてが、苦笑気味に笑みを浮かべて。余りに猪突すぎて、一緒にいたヴィヴィオとフェイトの方が窺わしい目線でジッとはやてを見つめるとそれに気付いたはやてが、苦笑しながら呟く。


「……あれも、一つの“夫婦喧嘩は犬も喰わない”って、いうべきなんやろうかぁ……?」

「ふーふげんかは、いぬもくわない? はやてお姉ちゃん、犬は喧嘩食べれないよ?」


 フェイトから何でも頼んでいいと言われて、ジャンボパフェを美由希に頼んだヴィヴィオが、ぴょこっと顔をフェイトとはやての間から出す。前にいるなのはとユーノの間にいたはずなのだが、どうやら逃げ出してきたらしい。賢明な判断だね(やね)とフェイトとはやても同時に妙な納得感を持っていたりしてりして。
 と、ヴィヴィオの言葉にまあ、普通はそう思うわなぁ……と苦笑いをしながらも続けた。


「うーん。そういう意味やないんやなぁ、ヴィヴィオ。というわけで、フェイトちゃんの回答を」

「へっ!?えっと、夫婦喧嘩は犬も喰わない?って、でもはやての言い方だとそれって意味が違うんじゃないの?
あれって、確か夫婦喧嘩はすぐに仲直りするから、犬だって食わない、つまり仲裁をしないって意味、だよね?」


 管理局執務官は、管理局や管理外世界のことも一通り風習含めて理解をしている必要がある。それは、ある世界では敬意を表すことが、別の世界では最上級の軽蔑を意味することだってあるからだ。とはいえ、さすがに日本にある諺までは必修ではないはずで。
 ……妙なところで、フェイトちゃんって、日本のこと調べておるんやなぁ、などと感心してしまうはやてだったが、まあそうやねぇ、とうなづいて同意すると、でも……と続けて。


「まあ、普通ならフェイトちゃんの言った通りやけど……でもなぁ、フェイトちゃん。
……あの二人の甘々な空間に誰が好き好んでかかわりたいと思うんや?そりゃ、犬だってかかわりたくないやろう?
かかわったら、冗談じゃなく糖尿病で病死しても私はあれが原因やな、と納得できるで」

「あ、あはは……否定できない、なぜか否定できない……」


 ……冗談のはずなのに、冗談に感じられない。
 そんなはやての言葉に、もう苦笑い以外の何もできずに頬を引きつったように崩れた笑みを浮かべるしかないフェイトだった。
 そう、もう誰も止めることはできないのだ。


 ――夫婦喧嘩は犬も食わない。なのはとユーノの仲は犬も食わない。残念なことに、真理すぎた。


「ずっと一緒にいようね、ユーノ君っ!ううん、私の大切な旦那さんっ♪」

「うん。いつまでも、なのはと、僕もいるつもりだよっ♪」


「「はぁ……美由希さん、コーヒーをブラックで追加お願いしますっ!!」」


 ……というか、ユーノとなのはの愛云々よりも親友二人の体が持つだろうか。仲良きことは美しきかな、とは思いつつも、もう少しだけ二人揃って抑えてほしい……そう切実に願う、二人は、盛大にため息をついて意思表示をするしかなかった。
 結婚から1年。未だに新婚気分バリバリの二人が気付いてくれるかは……わからないが(汗)




―終―




――――――――――



あとがき
 シャッフルリクエストに沿って時の番人様からまわってきましたテーマは
「俗に言う、『夫婦喧嘩は犬も喰わない』を地でいく二人」でした。それを苦心しながらもなんとか書き上げた……つもりですが正直、これでいいのだろうかぁ……不安です。
 結婚前提ということで、書き上げたのですが……単なる甘々だね、うん。
 これでもがんばったんだよ!甘々な話を書くために甘い食べ物一杯食べたんだよ!(関係ない


 と、冗談はさておいて。結婚するまでの話ばかり書いてきた私だけあって、結婚後というテーマは大変でしたが
 夫婦喧嘩は犬も喰わない、というテーマを下さった時の番人様のアイデアは私ではきっと出なかっただろうなぁ、と思いながら書き上げました。
 夫婦喧嘩は犬も喰わない、基本的にはすぐに仲直りする、という意味で使うのですが、ユーノとなのはがそもそも喧嘩をする情景が思い浮かばない!?(笑 しかも、結婚済みだ、さあどうするっ!? と、テーマが送られてきたときは相当話の内容を考えるのに苦労しましたが……どうでしたでしょうか?
 特にテーマを下さった時の番人様。私は半分、なんじゃこりゃぁぁ!?と言われそうで怯えています(汗

 前半は単なる甘々話。後半は、そんな二人に対するフェイトとはやてのツッコミ、という流れにしたのは、ツッコミ役がいないとこの二人は果てなく暴走して、新婚夫婦10年越えの桃子さんや士郎さんをきっと超えるんだろうなぁ、なんて書いていて思いました。

 ユーノ君となのはさん。親友から結婚してもきっと、基本的には変わらないような気がします。ただ、甘々度が当社比250%になったりしそうです。そんな妄想を書き起こしてみました……本編中のはやてさんじゃないですが、別の意味で食べたくないです、はい。

 苦労はしましたが、それなりにシャッフル企画の難しさと、達成感に浸りながら、ユーなのはいいなぁって思います。劇場版で二人のあの「背中が暖かい」シーンは見られるのかなぁ、と期待しながら!

 そして、ユーなの同盟2周年企画として、このような企画に参加できてとても楽しかったです。やっぱり、ユーなのは温かいですっ!
 それでは、ユーなのカップリングの今後に期待して! 



 ……期待していいのかな? い、いいんだよね!?



posted by グリグリ at 01:11| Comment(0) | リリカルなのはSS
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